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KR250再生2 [BIKE]

さて、フロントフォークのインナーチューブが返って来るまでにやらねばならないことが山積み。
キャリパーとアウターチューブのガンコート塗装は完了したが、まだ動くには程遠い。

まずはAVDSのリペア。
ブレーキフルードとフォークオイルの両方が漏れて酷い有様。
UKのGPZ ZONEから入手したGPZ900R用のリペアキットを使用して組み直す。

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部品があるのは有難いことで。
リペアキットを入手したは良いが、よく見るとプランジャーが削られている。
AVDSの作動をキャンセルしようとしたらしいが、AVDSの調子が悪くなるときは決まってプランジャーではなく、その下側にあるピストンが戻らなくなっているので、ここを削ったところで何の変化もない。
しかも下手糞に削っていて、周囲がガリガリになっている。再使用不可能。

仕方なく、某オークションで1500円で中古フォーク一式を落札して部品取りをすることに。
しかし、あろうことか後日、ガレージのジャンク箱の中でAVDS一式発見。かなり凹む。

外したAVDSは全分解してブラストを掛け、これもフォークと同色で塗装した。

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そうこうしているうちに、フォークのインナーチューブが返ってきたので早速組立。
オイルシール、ダストシール共に欠品。
さて、困ったなと思いながら探していたら、インナーチューブがVT250の初期型と同じ径だと判明。ダメ元で発注して組み込んでみた。

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そのままではVTのほうがオイルシールの全高が高いのでクリップが入らない。そこで、本来シールの下側に入るスペーサーを抜いて無理やり押し込んだ。結果、何とかクリップが入り組み立て成功。
ところがダストシールのはめ込み部がVTの方が細く、ガバガバ。
どうしたものかと悩んだが、嵌め合い部にシールテープを巻いて押し込んだ。一応固定できているので、これで様子見としよう。ダメならカラーを作って圧入するしかないかな。

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リアハブは油でドロドロだったので丸洗いした。が、スプロケットが完全に寿命。
走行距離は6000キロ少々だが、明らかにそれ以上走っているな。
メーターはアテにならない。
ベアリングを交換して組み込み準備完了。

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ブレーキキャリパー組立。
カワサキのマークは注意深く剥がして裏面を洗浄。接着剤で貼りつけた。
本当はもっと緑が掛かったガンメタみたいな色なのだが、再現が難しい。
これはこれでOKかな。

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ブレーキのブリードバルブは新品に交換しようと思ったが、値段を見て挫折。
ブラストを掛けて、銅めっきした。最初は金色だったが現在はいい感じに黒ずんでくれた。

さて、ビクともしないリアブレーキはマスターシリンダーを取り外してオーバーホール。
マスターを外すために、右側のステッププレートを分解する必要があるが、スイングアームのピボットと共締めなので結構分解しないといけない。結局フロントチャンバーまで外すことになった。

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ガチガチに固着していたピストンは、センターに穴を開けてタップを建て、ベアリングプーラーを使用して引き抜いた。内部は入念にホーニングしておいた。

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次はキャブレター。キースターのリペアキットを使用してオーバーホール。
最近は何でも部品が入手できるので助かる。

続く
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KR250再生1 [BIKE]

ご無沙汰です。一年近く放置してしまいましたが、ボチボチ更新していきます。

さて、お題のKR250。
3年ほど前に亡くなった上司の形見分けで私のところにやってきたKR250です。

遡ること20数年前、私の愛車はギャラクシーシルバーのKR250でした。
ZXR250Rに乗っていましたが、度重なるエンジン不調と新車の時からおかしかったフレームのジオメトリに嫌気がさして、友人から7万円で譲ってもらったのを覚えています。

その後、紺色にオールペイントしてずいぶん峠で腕を磨きました。
このバイクがあったから、今の私のライディングスタイルがあるのです。

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しばらく放置していましたが、ナンバーも付いているし、保険も残っている。
ひとまず軽整備で動きそうだとのことで、手を付けることにしました。

まずは、漏れているフロントフォークと引きずっているブレーキから。

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スタンドアップして、ホイールとフロントフォークを取り外す。

こうして見ると、近未来の乗り物のように見える。

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まずはフロントフォークを分解して、錆びたインナーチューブを再めっきに出した。
内部はドロドロ。ボトムには薄いワッシャーが入っているのだが、過去に分解された際に変に噛み込んでしまったようで、グチャグチャに破壊されていた。無くても問題無いと判断してワッシャーは両方とも取り外した。スライドメタルは出たが、トップキャップのOリング以外はすべて販売終了。
当然AVDSの部品も無い。
仕方ないので、UKのショップからGPZ900R用のリペアキットを取り寄せた。

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ブレーキはすべて固着。フロントは分解してみると片側がKRのじゃない。黒く塗られているのでFX400R用か?
リアはどうやってもピストンが抜けず、AR125のフロントマスターシリンダーを繋いで無理やり押し出した。

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錆びてるし。
シールキットは全部部品が出た。ブレーキパッドも純正新品を発注。

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さて、黒いキャリパーはどうするか…
実家のガレージに戻り、ジャンク箱の中を探すと昔乗っていたKR250のブレーキ一式が出てきたのでそれをベースにする。
マスターシリンダーは前後とも固着。リアに至ってはピストンが全く抜けてくる気配がなく、どうやっても動かない。
仕方ないのでピストンのセンターにドリルfで穴を開けて、タップを建て、、M6のボルトをねじ込んでプーラーを掛けて引き抜いた。ピストンキットは幸いにも新品が出た。前後とも交換する。
マスターシリンダーのボディは虫食いがあるものの、軽くペーパーでホーニングして再使用する。

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さて、外装はというと、どうやらタンクは新品の模様。
残念なことに内部は浮錆が発生している。

フォークのインナーチューブが返ってくるまでの間、できる限りの化粧直しをしよう。

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まずはブレーキディスクローターのボルト。新品は現行車種と共通なので当たり前に部品が出るが、ここはひとつ再生してみよう。
塗装してもいいのだが、今回はめっきにチャレンジ。
材料の大半は100均で揃う。
陽極は会社のごみ箱で拾った銅板。
最初は銅めっき、次いでニッケルメッキに挑戦。

・・・したが、銅めっきは上手くいったがニッケルは失敗した。
硫酸ニッケルが無いと難しいな。

銅なので、いずれ緑青が吹いて黒っぽく変色するが、それもまたいいか。

続いてフロントフォークのアウターチューブとブレーキキャリパー。
アルミの母材が腐食して塗装が浮いてしまって非常にみすぼらしい。

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フロントフォークはよく見ると左右でデカールが違う。年式の異なる車両のを二個一した模様。モノは同じみたい。デカールの純正品は入手不可能だが、リプロ品がイーベイに出ていたので購入。これもUKから送ってきた。これもGPZ900R用で、色が違うがこの際仕方ないのでこれで行く。
ちなみに下側のガンメタのデカールがこの初期型では正解。リプロ品は上とよく似たものになる。

部品は全てブラスト処理をして、焼き付け塗装をすることにした。

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一回目を塗った直後。
色が元とだいぶ違う。ダメだこれは。

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2回目。これも全く色合いが違う。GPZ系みたいな色になった。
ま、良しとしよう。

使用した塗料は「ガンコート」だが、これがまた塗り難い。シャバシャバなので、油断するとすぐに垂れる。
おまけに薄いのでしっかり塗らないと斑になる。
出来上がったものの、イマイチ色が気に入らない。結局調色しながら3回ほどやり直した。

続く
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スクーター修理 [BIKE]

友人のS君の奥さんが乗ってたというスクーターを預かった。
ホンダのトゥデイ。
乗り手を探してほしいということだったけど、なかなか見つからない。
そこで、自分でチョイ乗りに使うことにして、整備を行った。

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長期間放置していたせいで、例の如く始動できない。
バッテリーも完全にダウン。
スクーターは手強いゾ・・・とか思っていたが、最近は整備性が著しく改善されていて、
ボルト4本外せばメットインスペースがシートごと取り外せてエンジンが剥き出しになった。

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キャブレターはスクーターにありがちなタイプ。ホンダらしく京浜製だ。
フロートチャンバーを外して点検するが、内部はきれいなもの。
念のため、ジェット類を清掃して組み立てたところ、あっさり息を吹き返した。

走ってみるとパワーは無いが、滑らかに走る。スクーターだから当たり前か。
昔乗った事があるタクトなんかに比べると圧倒的に静かなエンジンだ。
走りは完全に負けているが・・・

一通り灯火類諸々のチェックをして洗車した。

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ポリマーコートでピカピカ。
右に一度転倒した形跡があって、擦り傷がついてはいるがその他の部分のコンディションが
抜群に良いのでこの程度は目をつぶろう。

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走行2300km。まだエンジンのアタリも付いていない。
オイル交換して整備完了!

欲しい方居れば、譲ります。。。居なけりゃ自分で乗ります~

750TURBO リアブレーキ [BIKE]

暫く前に整備したリアブレーキ、とんでもない失敗をしでかしていました。

先日組みあがったエンジンの調子を見るため試運転をしていたところ、
突然リアブレーキの引きずりを発生。
夜だったため何も見えず、途方に暮れていたが、冷えてくると何も無かったかのように
引きずり解消。
原因不明のまま、一旦ガレージに戻り、点検するも特に不審な点は見つからず。

その後、近所を走り回ってみたものの、再発せず、ゴミでも入っていたかな?位で
深く考えていなかった。

その後、所要で高速に上がったときに再発。
間の悪いことに路側帯が狭い場所で、広くなるところまで数キロ無理やり走ったら・・・
当然ブレーキは焼けて、白煙を上げる始末。

どうしようもないので、その場はブレーキフルードを抜き、ピストンを押し込んで
走行を続けることになった。
熱くて触れず、モタモタしていたらNEXCOのパトロールカーが到着。
応急処置の間交通整理をして頂いた。
大変申し訳ない。


さて、焼けたキャリパーは・・・・
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黒かった筈だが、見事なまでに金色に変色した。
ディスクもパッドのコンパウンドが焼き付き、再利用は躊躇われる状態。

ひとまず焼け焦げのキャリパーはオーバーホールが必須だが、それより原因を
確かめないといけない。
思い当たるのは、ZR-7用のピストンだ。
長さが異なっていたのを、ロッドで調整すればいいと安易に思い込んで組み込んだことが
原因だと思われる。

そこで、マスターシリンダーを分解してオリジナルのピストンとじっくり見比べてみると・・・

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シールの位置が約4mm違う。

よくよく考えるとロッドはストッパーで規制されるので、押し込む方向には調整できるが
伸ばす方向には無理だ。

一方、上側のシールはブレーキペダルがフリーの状態で、リリーフポートの下とメインポートの
中間に位置してキャリパーとマスターシリンダーのタンクが直結状態になる必要がある。
メインポートは上下のシール間に位置して、ブレーキフルードをピストンの中央部分に閉じ込めて
いる状態だ。

従って、4mmも長いピストンを適正な位置に持ってくると、下側のシールがマスターシリンダー
から飛び出してしまう・・・・
が、実際はストッパーに当たってそこまで移動できない。

このため、キャリパーに掛かった圧力が逃げられず、引きずりを生じていたのだろう。

そこで・・・
どうすればいいのかを考えてみた。

①オリジナルのピストンに現行のシールを組み替える。
②合うサイズのピストンキットを探す。
③いっそ別のマスターを付ける。

分解して各部の寸法を測ってみたところ、ZR-7用のシールの内径のほうが太い。
これをオリジナルに組み込むとセンターから漏れます・・・
よって①はダメ。
②の合うサイズのピストンキットなんてあるのかどうか判らない・・・・
気力も財力も無いのでこれも却下。
③しか無いかと、ブレンボのカタログを見たり、バイク屋さんに物色しに行ったり
したが、イマイチ合いそうなのが無い。

ZR-7用は長さは合わないが、リリーフできないだけできちんと機能している。
と言う事は、長ささえ合えば使えるということに気が付いた。

そこで・・・
このピストンの真ん中付近を金鋸でバッサリ切断。
そして・・・

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旋盤に咥えて端面を平坦に加工した。

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何度か長さの測定をしては切削をして目標の長さになるよう調整する。

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ほぼ同じ長さとなった。
バリを鑢で削り落として、このピストンを積み木のようにしてマスターシリンダーに
組み込んだ。

次はキャリパー。
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フロントと比べるとこんなに色が違う。
全分解してみたら、パッドはライニングが溶け落ち、バックプレートが熱で歪んでいた。
シールもピストンシールは無事だったが、ダストシールは炭化してしまっていた。
ブーツ類はかろうじて使える状態だが、どうせ分解するのだから新品に交換することにした。

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ブラストを掛けて一皮剥いてからエンジンを塗装した残りの塗料で塗装する。

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釜で180℃×30分の焼付け。

その後シール類を組み込み、オーバーホール完了。

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キャリパーに付いていたカワサキのバッジも茶色く変色していたが、
これは綺麗に外して接着剤で貼り直した。
変色は自分への戒めとして残す。

エア抜きをして、今度はきちんとキャリパーが戻ることを確認して、今回の修理完了。

ディスクはひとまずこのまま使用するが、いずれは交換せねば。
サンスターでワンオフするか、程度の良い中古を探すか、悩ましい。





750TURBO  ヘッドオーバーホール9 [BIKE]

えーっと、何処まで書いたっけ。

そうそう、オイルパンを分解したんだった。

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分解したオイルパンに残っていた油を流し切ると、中から結構な量の砂と小石、ガスケットの
削り屑が出てきた。
開けたのは無駄ではなかったということだ。

そういえば、以前からオイル交換するとドレンボルトのネジがざらつくような感触があったが
これが原因か。

どうやら以前分解された際に十分養生をせずに、クランクケース内にゴミを落として
しまったようだ。
私が落としたのではない証拠は、写真のオイルポンプのストレーナにびっしり付着した
ガスケットの削り屑だ。エエ加減なやっつけ仕事の痕跡がアリアリだったので、
こんな事態があってもおかしく無い。見た目が良ければそれでいい人種もいるということだ。
技術者としてのプライドは無いのだろう。

さて、気を取り直して洗浄して観察。

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結構塗装がヤレている。
カウリングに隠れて見えなくなってしまう部分だが、やはり気になる。
マスキングをしてブラストを掛けて、これも耐熱塗料で焼付け塗装を行うことにした。

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ブラストをして、間髪入れずに塗装を行う。
24時間乾燥させてから焼付けを行うのだ。

その間、腰上の組み立てを開始。

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前回落っことしたダンパーゴムはスーパーX で貼り付けた。
今回はもし内部に部品を落としても回収できるように、オイルパンを組まずに行う。

シリンダーベースガスケットにパーマテックスのガスケットスプレーを薄く塗布して暫く放置。
カムチェーンスライダーをクランクケースに載せ、オリフィスとOリングを忘れず装着すし、
ガスケットを載せて、シリンダーを載せてゆく。

ピストンリングを慎重に押し込み、ガスケットがずれていないことを確認してケースに密着させる。
かなり気を使う場面だ。

カムチェーンをトンネルから引き出しておいて、ヘッドガスケット、オイルラインピース、Oリング、
ノックピンを取り付けて、ヘッドを載せる。
この時点でカムシャフトは組んでいないので、クランク位置は何処でも問題ない。

この状態で締め付けナットを締めこんでゆくが、最後にカムチェーントンネル内のM8ボルトを
締めている最中に事故発生。

トルクは3kgf/mの指定だが、2回に分けて締めこんだところ、後ろ側が1.5kgfも掛からず
どんどん回る。最悪の手応えだ。

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引き抜いたところ、ねじ山が付いてきた。
ここまで来てやり直しかorz

嘆いていても埒が明かないので近所のストレートに走る。
ネジ穴リペアキットを買い込み、シリンダーのネジ穴修正開始。
周囲をガムテープで養生してからドリルで下穴を刳る必要があるのだが、真上にフレームがあって
ドリルが入らない。普通ならシリンダーを抜くのだが、一回締め付けてしまっているので
ガスケットのことを考えると抜きたくない。
そこで、ドリルの刃をウォーターポンププライヤーで摘んで手作業で穴刳りを行った。
相手がアルミなので、こんな荒業も可能。

下穴が開いたらタップ建て。
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下側はカムチェーンテンショナーの取り付けボルト穴に貫通しているので、慎重に
深さを測りながらタップを建てる。
ねじ山が形成できたらヘリコイルを挿入してタブを折り取って作業完了。

周囲を念入りに掃除して、再度ヘッドを載せて締め付ける。

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指定トルクは4kgf/m。
マニュアルには2回に分けて締めろとあるが、3回に分けて締めこんだ。
この辺は「気は心」という奴だ。

1-4トップを出しておいてからカムシャフトを載せて、タイミングを確認するが・・・
何度やってもマニュアル通りの位置にカムチェーンが来ない。
サービスマニュアルの絵の通りにスプロケットの合いマークが来ないのだ。
よくよく観察すると、合いマークがおかしいのではなく、カムチェーンのリンク位置が
絵と違う位置でしか止まらない。なんだろう?
マニュアルの間違いなのか、固有の問題なのか判らないが、半駒分だけタイミングが
ずれる。チェーンが伸びているのか?

思案の結果、タイミングが早くなるほうに半駒ずらして組み付けた。
遅いのは論外だ。この作業に数時間費やした。

カムチェーンテンショナーは組み付けた状態で、ロック用のテーパーシャフトをフリーに
した状態で組み付けを行う。チェーンが弛めば押し、張れば戻る状態だ。
この頃だけ採用された側面からテーパーシャフトを押し込むタイプのテンショナーだが、
組み立てるときは楽だ。
現在のボールロックタイプはシャフトの磨耗や作動不良があってあまり好きじゃないのだ。

バルブクリアランスはヘッド組み付け前に調整完了している。
クリアランスの基準値は許容範囲が示されているが、このちょうど真ん中をターゲットに
広くなる方向になるよう調整した。

何故ならバルブのクリアランスは狭くなる方向にしか変動しないからだ。
リフターが磨耗すれば広くはなるが、正常な潤滑が行われている限りはリフターの
磨耗は無視できる。もしくはカムホルダーかカムシャフトのジャーナルが磨耗すれば
広くはなる。これも潤滑に問題が出ない限り発生しない。

潤滑は正常で当たり前なので、それ以外で隙間が変化する要因といえば、バルブシートの
沈み込みと、バルブフェースの磨耗だ。
入念に擦り合せを実施したとはいえ、エンジンが回転すると擦り合せ時とは比較にならない
力と熱と衝撃が数え切れない回数発生する。
熱的にも潤滑的にも非常に厳しい環境下で馴染みも発生するだろうと予測しているのだ。
これは避けられない現象なので、広めのクリアランスで馴染んでも基準値から外れることが
無いようにとの配慮だ。

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エンジン本体は組みあがった。給排気関連の部品を組み付けて、ちょっと化粧直し。

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GPz系の空冷エンジンは、ヘッドのフィン端面が機械加工仕上げされてアクセントになっている。
塗装してここにも塗料が付着しているので、粗めのペーパーで磨いてヘアライン仕上げとした。
周辺の塗装を傷めないようにマスキングを行ってから作業。

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補機の組み付けに際して、サージタンク裏のプレッシャーセンサーのダンパーゴムが
劣化してカチカチになっていたので、新品に交換。有難い事にまだ部品が出る。

さて、腰上の組み立てが終わったので、オイルパンの組み立てを開始。
ヘッドを組んでいる間に焼付けの終わったオイルパンの組み付け準備をした。

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ターボのオイルパンは二階建て構造になっている。
下側にタービンからのオイルリターン専用のオイルパンが追加されているのだ。
ここはOリングでシールされるのだが、このリングが欠品だ。
ゴム紐から作ってもいいが、ちょうどいい太さのゴム紐が無かったので、ジョイントシートを
使ってシールすることにした。

オイルパン中央にある2本のボルトで締め付ける構造だ。
ボルト穴のあるダボが周囲とツライチなので、そのまま外周だけ取り付けるとここに隙間ができ、
ボルト周辺からオイル漏れを起こす原因となる。
かと言って、ここに同じ厚さのパッキンを入れると周囲の締め付けが甘くなる。

なので、外周部のパッキンは1mm厚さ、ボルト穴周辺は0.5mm厚さで切り抜き、
ガスケットペーストスプレーを塗布してから組み付けた。

これでここからの漏れは治るだろう。

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オイルパンのパッキンは左がターボ用、右がZR-7用。
万一のことを考えて、コピーをとっておいた。
もう一度外す必要が生じても、これで切り出すことが可能だ。

随分と平面が多いデザインだが、外周の形状は一緒。
平面部はバッフルプレートの役目を果たすと推測。
オイルの泡立ちを抑え、気泡の噛み込みによるタービンの損傷を防ぐのではないか。
開発中に何かそういうトラブルがあったのかもしれない。
ターボ特有の構造だ。

タービンから戻ったオイルは、前述の小さな小部屋に溜り、ここから別のオイルポンプで
汲み上げられてオイルパンに戻る。これもターボ特有の構造だ。
このオイルラインがクランクケースとオイルパンに設けられており、ここが他のザッパー系の
エンジンとの最大の相違点だ。
すなわち、ターボのクランクケースだけが特別あつらえになっていて、互換性が無いのだ。
他にもタービンのマウントボスが付いているとかいろいろ違いがある。

念を入れて締め付けを確認した後、新品のフィルターを組み込み、オイルを注入。
使用する銘柄はシェル・ヒリックス・ウルトラだ。
マセラーティと共用だ。
4輪用のオイルはダメだとか言われているが、今のところ問題が出たことは無い。
むしろ、ターボ用のオイルが無い二輪用は如何なものか・・・とか思っている。

外装を組み付け、始動を試みたところ、一瞬火が入ってからは火が入る気配が無い。
ガス欠気味なのと、バッテリーが弱っているのも原因か。
ブースターケーブルを接続して、自動車用バッテリーで始動した。

以前はカチャカチャと騒々しかったメカノイズは消え、新車のような静かさになった。
ゴッゴッゴッ・・・と少し脈動しながら回っていたアイドリングもズオーッと継ぎ目の無い
連続音で回るようになった。

魂が宿った瞬間だ。

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雨が上がったら慣らし運転に出かけよう。


750TURBO  ヘッドオーバーホール8 [BIKE]

ご無沙汰です。

塗装の完了したシリンダーを組立てている最中に、事故発生。

極端に張力の強いピストンリングがなかなか収まらず、四苦八苦していて
ようやく全部入ったと思ったら、なんかカムチェーンガイドの位置が変。

!!!!

溝から脱落してケース内に落ち込んでいる。

で、このチェーンガイドの支点部分にはゴムのダンパーが2個乗っかっているのだが・・・

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恐る恐る引っ張り出してみると、2個とも無い。
ガ~ン!嘘だろ?
チェーントンネルから覗き込むも、不精してオイルを抜いていなかったので
油面が見えるだけ。
その日は熱が出て寝込んだのでした。


さて、後日、気を取り直してオイルを抜いてみた。
改めて捜索するも見当たらず。

そこで、駄目で元々の精神で、ピックアップツールで闇雲に引っ掻き回すこと
15分。ようやく一個摘出。

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写り悪いですが。

残りを小一時間つまみ出せないかトライしたが、玉砕。
諦めてオイルパンを外す事にして、部品の発注のためバイク屋さんへGO。

ところが、肝心のガスケットが欠品。
とりあえず落とした部品を回収しないことには組立てられない。回せない。
背に腹は替えられないので同系エンジンであるZR-7のパーツを発注した。

何が違うかといえば、ターボのガスケットはオイルパンを仕切るように広い範囲で
平面が設定している。
一方、NAのエンジンは、オイルパンの周囲のみシールするタイプだ。
ターボのガスケットにはバッフルプレートの役目も持たせているようなのだ。

クランクケースの形状は同じなので、多分周囲だけのガスケットでも機能は果たすし、
実用上もさほど問題にはならないと予想するが・・・

そこで、あちこち検索すると、某ショップで製作していることが判明した。
送料込みで10000円弱と高価だが、この際仕方ない。
ひとまず発注しておき、その間にオイルパンを分解した。

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取れた。寝転んでの作業は辛い。
バイクリフトを買っとけば良かったと、少しは思ったが、こんな重整備、
今後するかどうか判らんしなぁ。

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ハイ、ありました。
これで心配事はとりあえず全部クリアー。

午後からバイク屋へ部品取りに行ってこよっと。

750TURBO  ヘッドオーバーホール7 [BIKE]

さて、ヘッドは2mmのシムを入手し、バルブクリアランスを測定したところ、
何とかメーカー設定のシムの範囲内で組めることが判明した。
次回のバルブシートカットは不可能ということでもあるが、必要が生じた場合は
シートリングの入れ替えを実施しよう。

シムを発注する必要があるのだが、余裕を持って必要なシムの前後も
購入することにした。

と、いうのも、クリアランス測定を行っている最中に気が付いたが、2mmのシムを入れて
測定した状態と、そこから計算して求めた必要なシムを入れた状態で再測定すると
計算通りにならないことがあった。測定ミスかと思って再度2mmのシムを組んで
測定するが、やはり前回の記録と一致する。
組み込むシムの厚さも実測して計算するので間違いない。

傾向としては、計算で得たシムを入れると広めのクリアランスを示すのだ。

リフターの落ち着きが悪いのかと思って押し付けながら測定してみたりするが、
いかんせん狭く、上手く行かない。

カムシャフトの位置にも影響されるようで、僅かな角度の差で測定値が変化する。

推定としては、2mmのシムを組んだ状態ではクラランスが広いため、複数のシックネスゲージ
を組み合わせて測定を行うが、この状態だと板バネを重ねたようになって、実際はもっと
広いのに、狭目の測定結果になっているのではないかと思われる。
一方で、正規のクリアランスが得られるようにシムを組んだ状態だと、1~2枚のゲージで
測定するので比較的正確に数値が得られるのだろう。

従って、必要なものに対して0.05mm厚いシムも併せて発注した。

排気側の2箇所は給気側に入っていたシムと、手持ちの中から適合するものがあった。
しかし、そのうちの一箇所は前述の現象から許容一杯になってしまっているので、
これも併せて調整の余地アリ。

ちなみに手持ちのシムは、GPZ400Fとゼファーに組まれていたものであるが、
当時のシムを測定すると、750ターボに組まれていたものも含めておよそ2/100mm
程の誤差がある。いずれも厚い方向になっている。
シムの設定は0.05mm刻みなので、かなり大きい誤差だ。
ところが、今回購入した2mmのシムは誤差が1/100mm以下であった。
30年の年月の間に進歩したのか?

ところで、750ターボのバルブクリアランスは他のモデルと異なることを発見した。
測定前にサービスマニュアルのターボ用補足版を読んでいて気が付いたのだが、
排気側は他のモデル(ザッパー系のエンジンを積んだモデル)と同じ、0.08~0.18mm
であるが、給気側が0.08~0.18mmに対して0.13~0.23mmと広く設定されている。

これは、恐らく吸入空気温度が高いためだと推測するが、今後ターボエンジンを
弄るにあたり、良い考察を得られたと思う。カワサキは給気(吸気)側の条件を考慮している。
エンジンによってはNAもターボも同じサービスデータだったりするが、このことを
覚えておいて損は無いだろう。


さて、シリンダーであるが、焼付を行うことにした。
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釜に入れた状態。蓋をして加熱すること1時間、温度計は140℃程度しか指していない。
ガレージの中に入れてシャッターを閉めた状態にすると、瞬く間に180℃以上に上昇した。
周囲の空気の流れに大きく左右されるようだ。一考の余地あり。

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焼付は成功。硬い良好な塗膜を得ることが出来た。

次はホーニング。
シリンダ内面は磨かれてテカテカに光っている。
クロスハッチは残っているようだが、ホーニングを掛ける事にした。
ホーニングはドリルを使って手作業で行う。
本当は内燃屋に依頼したいところだが、もう余り時間も無いことから自分でやることにした。

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軽くホーニングして、砥石目を内壁に付けておく。この目がオイル溜りとなることを期待する。

さて、次はピストン。
外すつもりは無かったが、ベースガスケットのカスを除去するのに邪魔になる。
カーボンの付着も酷いしスカートに傷も見えることから外して整備することにした。

P4121588.JPG

カーボンはスクレーパーでこそぎ落とした。
スカートの傷はオイルストーンで慎重に研磨。削り過ぎるとアウトだ。

傷を付けない様に注意しながらカーボンを落とすと、予想外なことにリングランドと
ピストントップがコーティングされているようだ。テフロン加工かな?
スカート部の傷が深いようならスカートにコーティングを掛けようと思っていたが、
簡単に傷が消えたのでそのまま現状で組み込むことにした。

ターボのピストンは圧縮比を下げるために頂部が平らになっている。他のザッパー系の
ピストンは大きく頂部が盛り上がった形状をしているのだ。
つくづく4バルブで無いのが惜しいエンジンである。

ピストンリングは新品を発注した。
結構高価でシム、チェーンスライダー等と合せて25000円程になった。
はっきり言って、かなり予算オーバーとなってしまったが、開けてみたらあれも駄目、
これも駄目というパターンは良くあることだ。

これで新車時のパフォーマンスを取り戻せることを期待しよう。


750TURBO  ヘッドオーバーホール6 [BIKE]

昨日の続き。

昨日塗装したシリンダーを確認すると、薄い箇所が透けてくるようで、
うっすらと下地が見えている箇所がある。
もう一度上塗りを掛けた。

一方、シリンダーヘッドはバルブを組み付け。
P4051585.JPG

擦り合わせをしているので番号を間違えないように確認しながら組み込んでいく。

P4051586.JPG

8本組み上がったら、ひとまずカムを載せてクリアランスのチェック。
多分駄目だろうと思いながら、初めに入っていたシムをそのまま組み込む。
シムは5/100mm刻みとなっているが、実測すると2/100ほども誤差がある。
殆どが2.40~2.50の間で組まれていた。

結果はクリアランス、ゼロ。
予想通りだ。
シートカットとフェース研磨の結果、バルブが沈み込んだのだ。

とりあえず、バイク屋に赴き2.00mmのシムを4枚発注した。
これを入れて再度測定し、基準値に入るシムを選定するのであるが、
一般に0.08~0.18位なので、0.3mm以上バルブを突いていたらアウトである。

対応しきれない場合はどうするか・・・
サービスマニュアルにはヘッドを交換しろとある。
恐らく結構なプライスが付いていると思われるし、そもそもヘッドがあるかどうか甚だ疑問だ。
一般的には切削加工でシートリングを削り落とし、新規に制作したリングを
冷やし嵌めするのだろうが、そこまでやるのはまだ早い・・・

というので、もし、基準値を超えていた場合は裏技披露の予定。
2mm以上のシムで済むことを祈りたい。

750TURBO  ヘッドオーバーホール5 [BIKE]

塗装が完了したヘッドを洗う。
マスキングの隙間からブラストメディアが入り込んでおり、ブラッシングしながら
しつこく洗い流した。

P4041585.JPG

この状態で洗い油を切っている間にシリンダーを抜く。

P4041587.JPG

シリンダーを外してみたところ、ピストンにはスラストによるアタリと小傷が見られるが
概ね良好。よくよく観察すると、ピストンには磨いた形跡がある。
やはり一度分解されているようだ。

P4041588.JPG

取り外したシリンダー。排気側(手前)にガスケットで半分塞がった謎の穴が6つある。
何も何処にも貫通しないし、ケース側も塞がっている。ゴミが溜るだけのような気もするが?

また、このガスケットは社外品なのか?
現在ZX750Eの部品番号でベースガスケットを注文すると、メタルガスケットが届く。
付いていたのは紙・・・というかジョイントシートと呼ばれる類のもの。
外して気が付いたが、両脇にあるオイルラインのオリフィスのOリングを注文し忘れている。
上側のオイルブロック用のOリングはうっかり2回注文してしまって4個ある・・・

で、このシリンダーも塗装することにした。
張り付いたガスケットを剥ぐと、スクレーパーか何かでこすった痕が残っている。
カッターナイフを使用したような直線的な傷もある。
しかし、シリンダー内部はホーニング目が古く、手を入れられている様子は無い。
やはり誰かが分解しているが、カーボンの付き方といい、バルブのアタリの悪さといい、
どうもキッチリOHしているとは思えない。

推測するに、オイル漏れかなんかを修理するためにやっつけでガスケット交換だけ
やったのではないか?
うーん、難しいところだ。
どうせ開けるなら良い状態に持っていくべきだと思うが、商売で手を掛けずに
車両を仕上げるだけなら手抜きも有り得る。
手を掛けたところで誰も評価しないのであれば、そういった整備もあるだろう。

私は商売でやっているのではないので、心行くまで手を掛けるのではあるが・・・
(それでもピストンを外してまではやらない)

さて、シリンダー、マスキングをしてブラストを掛けた。
シリンダーフィンの奥の塗装がなかなか剥がれないと思ってドライバーの先で突いてみたら、
塗料ではなくアルミ地だった。
砂型鋳造なのか、型が崩れたような感じだ。ちなみにリョービ製。

その後エアブローしてから塗装。
天気が悪く、雨が降りそうな上に日も暮れてきたので本日は駆け足で作業を済ませた。


750TURBO ヘッドオーバーホール4 [BIKE]

さて、放置プレイ状態の我が750TURBOだが、そろそろ何とかしないと
GWに乗れない・・・ということで、疲れた体に鞭打ちながらも作業再開。

P3071585.JPG

いつもお世話になります、徳島ボーリングさんにバルブのフェース研磨を依頼した。
これで擦り合わせ後の気密が格段に向上するのだ。

P3071586.JPG

あまりにも外当りだったので追い込んだがこの辺が限界。
最初は傘の縁から0.5mmも無いほどだった。
いくら外当たりが良いといっても限度がある。
これ以上の切削加工はバルブが沈み込むので止めておいた。

さて、ヘッド本体であるが、まじまじと見るとかなりハゲちゃびんでみすぼらしい。
せっかくだからと塗装することにした。
(典型的な傷口を広げるパターンだw)

ひとまずマスキングをしてアルミナでブラストするが、完全に剥離するには
キャビネットが狭くて難しい。程々で切り上げて塗装。

塗料は「オキツモ」というメーカーの焼付塗料を購入した。
色は黒の半艶。これをシンナーで希釈してガンで吹く。
気温が低いので1週間ほど乾燥させてから、応急で作った釜で焼くことにした。

この塗料は焼かないと硬化しないらしい。埃の手直しの為にシンナーで
ちょっと拭き取ったらあっさり塗料が溶け落ちた。

P3291591.JPG

会社のゴミ箱から拾ってきた巨大なモーターのファンシュラウド。
LNG船の冷却海水ポンプ用だ。
これを逆様にしてストーブで加熱する。

蓋はその辺にあったコンパネと鉄板。
温度自体は200度ソコソコなので、紙でも燃えない。

取説によると、180℃で20分ほど焼けとある。

P3291593.JPG

これまた大掃除の際にゴミ箱に突っ込まれていた某LNG船の名前が入った箱にあった
高温用温度計。蒸気タービンのクロスオーバーに取り付ける物のようだ。

ちょっと見難いが、180℃まで上昇したのを確認してから消火。
ここまで約二時間かけて温度を上げた。
寒空の下で行っていたので、なかなか温まらなかった。要改良である。

常温になってから取り出してみると、しっかりと硬化したようだ。

組立ては後日。

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