SSブログ

えすえふの仕事 [荒野の素浪人]

エスエフである。

SF

なんか、こう、面と向かって言うとちょっと恥ずかしい気持ちになるのは
蝋燭や鞭や縄なんかを使って楽しむ例の略語に似ているような気がする
語呂のせいかもしれないが、ぶっちゃけ似た様なものであると最近気が付いた。

我輩の好みは60年代以前のアメリカンな奴で、飛んだり滑ったりするのが好い。

・・・いや、鞭や蝋燭はあまり関係無いから変な目で見ないでくだせぇ。

詳しく説明すると、空や宇宙を飛んでみたり、時間を越えて行ったりする奴だ。
平たく言えばタイムスリップモノだ。
当然そうなると、初っ端はジュール・ヴェルヌやH.G.ウェルズから始まり、
ハインラインでフェードアウトする。

手持ち無沙汰な休日は、大抵冷めたコーヒーを脇に置いて読み耽っていることが多いが、
話しても誰もそんな休日を信じてくれない。
曰く、暇さえあればエンジンを弄っていたり、車やバイクを乗り回したり、自転車に
乗ってアホみたいな距離を走っていたりするイメージだそうだ。

間違いである。

何を隠そう、私の趣味は「読書」と「音楽鑑賞」なのだ。小学生の頃から自己紹介で
そう言ってきたが、誰も信じてはくれないのだ。

機械弄りは誰もやってくれないし、誰かにやってもらうお金も無いし、やってもらう
仕事に信用が置けないから自分でやっているだけで、別に好きな訳ではない。
もうひとつ言うと、最近は乗るのもあんまり好きじゃない。
エコカーとやらをスマホ片手にモタモタフラフラ徘徊させている連中の中を走って
何が楽しいものか。
まぁ、自転車は割と好きだが乗っている最中は苦行以外の何物でもないのが真相だ。

という訳で、「読書」と「音楽鑑賞」。これで決まり。
以前は「映画鑑賞」も入っていたが、最近はつまらなくなってしまったのでもう除外だ。
CGばっかりの洋画もハイビジョン撮影の時代劇にも辟易する。
やはりフィルムで撮ってナンボだろう。

以上挨拶。


さて、ここから本題。
最近仕事にモチベーションが上がらない。

何故か。

現在の担当している仕事に終わった感が満載のためだ。
実は、今の仕事はSFであると(薄々そうではないかと思っていたが)最近気が付いた。

えすえふとは何ぞや?

一説によるとサイエスフィクションの略だそうだ。科学的造話なのだ。
ガンダムもマジンガーZもロボコンも鉄人28号も全部SFだ。
空想のメカが大地を走り、飛び、戦うのだ。子供の操縦で。

で、仕事がSFだったらどうか?

我輩、SFを読むのは大好きだが、自分で書けと言われるとこれまた大変だ。
多分、読んで楽しい脳味噌と読むと楽しくなる文章を作れる脳味噌はイコールではない。
およそ向いていなさそうである。

現在は、それを必死になって真面目に作っているのだ。

事の発端は、今の仕事、会社の命運を賭けた一大プロジェクトなのだそうだが、
エリート社員ではなく、いつも本当のことを言ってしまうが為に干されまくっていた
我輩にお鉢が回ってきた・・・早い話貧乏くじのこの仕事は最初から皆敬遠した訳だ。

南米の某国の某石油会社が企てた海底油田計画がある。
そこで、ウチの会社は現地に合弁会社を作ってその需要に応えようとしたのだ。
ところが、連中ときたら非常に陽気で上手い肉をタラフク食い、砂糖の入った焼酎を
飲みながらケツのでかいお姉さんを眺め、飽きたら蹴鞠に興じる楽しい連中だ。

これが仕事になると、何にでもイニシアチブを取りたがり、いきなり鍋奉行ならぬ
仕事奉行になる。

が、連中蓋を開ければ「自称」プロであった。
まぁ、日本人にもそういった輩は居るが。

設計できないので、黒海沿岸の某国の設計会社に図面を書いてもらい、
それを現地で作ることにした。
しかしそう上手く事は運ばない。

現地工場建設工事は遅れに遅れ、終にウチの会社で後始末をすることになった。
元受である筈の出資側が下請けに転落した瞬間である。

それでも実績ある図面なら何とかなるだろう。
よくよく話を聞いてみると、その設計会社は工場を持たないそうだ。
早い話、絵だけ書くアトリエだったのだ。

そんな図面を元に始めたはいいが、工場もまともに作れない連中が、きちんと
必要な部品を必要な時期に供給できる訳も無く、モノは無い、図面も無い、来た物は合わない、
図面と違う、工作不能な箇所多数・・・と不具合の枚挙に暇が無く、何一つまともに作れぬまま
そろそろ1年が過ぎようとしているのが現状だ。

簡単に言うと、「絵に描いた餅」だった訳で、それを食えるようにするために
必死に頑張った1年だったのだ。

現場の頑張りで、何とか形にはなってきたが、形ができるのと機能するのは
また別問題で、どんなにカッコ良くても粘土で造った車は走らないのだ。

我輩の経験からするとこの製品は機能しないと断じざるを得ない。
言い換えれば、これはただのオブジェである。1/1スケールのメタルディスプレイモデルである。

そう、これはSFなのだ。ファンタジーなのだ。
「こうだったらいいな」「こんなのだったらステキだな」という思いはなんとなく伝わってくる。
が、実際に作るとなると話は別だ。
手が入らなくて溶接できなかったり、モノと絵が違っていて部屋に機械が入りきらなかったり、
狭くてネジが締められないとか、塗装ができないとか、頭の痛い問題が噴出する。

組み立てでさえこの有様だ。
実際に使うとなると、ぐるりと見回しただけで両手で数え切れないほど問題が見える。
手が入らなくて回せないバルブのハンドル、配管する場所が無い油圧系統、
エア抜きできない海水ライン、掃除できないストレーナ、分解するスペースの無い
機器類、詰まっても掃除できない汚水の配管・・・etc
加えて、未だ未検討の制御関係と計装機器、値段は日本と同等で品質はインド以下の
本国製品と、限が無い。

どうせ苦労するなら東欧の絵描きが描いたポンチ絵じゃなく、松本12時センセーに
お願いして某宇宙戦艦の図面を書いてもらうとか、いっそ、(たぶん)版権が切れたであろう
宇宙空母ブルーノアとかにすればヘリコプターと潜水艦も作れて3倍楽しめるのに・・・w
とか妄想してしまう。

テンション下がるのは、これをリリースすることだ。
こんなに出来の悪い製品、太平洋戦争時の戦時急造以来じゃないか?
恥ずかしくて何を作っているかとても書けん。

恐らく、上層部もこれが動くとは思っていないだろう。
・・・・いや、思ってるかもしれんが、実績稼ぎというのが当たらずとも遠からずといったところか?
その辺、平社員の我輩には窺い知れぬ世界なのだ。

という訳で、SFとは読むものであって、作るものではない。
作るとなると、それはもう鞭でシバかれるような苦痛と涙無しには語れない。
現場は泣き、我輩は心を鬼にして鞭を振るう日々・・・もうそろそろ終わって欲しい。
願わくば、ここ1年は無かったことにして、この後訪れるであろう運転調整の仕事は
勘弁してもらいたいと激しく希望中。
やりたくない仕事が来るのが先か、とんでもない額の負債を抱えて会社が無くなるのが先か、
SFチキンレースの行方はどう転んでも辛い未来となりそうだ。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。